こんにちは、物理学科のしば(@akahire2014)です
光電効果は奇跡の年と言われる1905年にアインシュタインによって理論が発表されたことで有名です。アインシュタインの論文によって以下のことがわかりました。
- 光は粒の性質も持つ
- 光電効果で飛び出す電子は光の強度によらない
- 光電効果で飛び出す電子は光の波長による
「この結論を知ってはいるけど、よくわからない。」
「そもそも光電効果って何?何がすごいの」
そんなあなたのために物理学科の僕がわかりやすく解説してみます。
光電効果の歴史
光電効果の発見
ドイツの物理学者ヘルツは1887年、電磁波の実験中に亜鉛の板に紫外線を当てると電気を帯びる現象を発見しました。これが人類が最初に光電効果に気づいた時です。
その後ドイツの物理学者レーナルトの実験によって光電効果は詳細に調べられ、光電効果で飛び出してくるものは電子であるということがわかったそうです。
以下の実験によってこんなことがわかります。

プラスとマイナスに帯電した金属板に導線をつないであげます。まずプラスに帯電した金属板に紫外線を当ててあげましょう。
しかしこれでは何も起こらず、導線に電流は流れません。画像でいうと、電球は光らないということになります。
今度は逆にマイナスの方に紫外線を当ててあげましょう。

そうすると今度は電流が流れます。この現象のことを光電効果と言います。
紫外線が当たることによって電子が飛び出して、マイナスの金属からプラスの方の金属に移動します。
電子が移動すること = 電流が流れる
ということなので、電流が流れたということになります。
つまりは光電効果は光によって電子が金属から飛び出す現象です。
- プラスの金属板に紫外線を当てても電流は流れない
- マイナスの金属板に紫外線を当てると電流が流れる
- 光によって電子は金属板から飛び出す。これが光電効果
ちなみに光電効果を最初に発見したヘルツはこんな人です。

光電効果の何がすごいのか?
光電効果は光の波の性質だけでは説明できない
光電効果が発見されるまでは光は波であるというのが主流の考え方でした。光は回折や干渉などの波に特有の現象を起こすことが知られていたからです。


しかし光電効果は光を波として説明することはできません。
光電効果の実験をしていると、ある波長より短い光でしか光電効果が起きないことがわかりました。

逆にある波長より長い波長を持つ光では光電効果が起きません。

そこでこの長い波長の光の明るさをあげます。めっちゃ明るくしてあげれば電子は飛び出てきそうですよね。
実際波のエネルギーは波の大きさの2乗に比例することが知られていたので、これで電子が飛び出すはずでした。

光が波であるなら、よりたくさんのエネルギーをもらった電子はどんどん金属から飛び出してくるはずです。
しかしそうならなかったとういうことは、光が波であることからは光電効果をうまく説明できないということになります。
アインシュタインの光量子仮説
そこでアインシュタインは光はエネルギーhνを持った粒(光量子or光子)の集団であるという考えをしました。
エネルギーhνの光の粒のことを光子または光量子と呼びます。

ν(ニュー)とは振動数のことで波が単位時間当たりどれくらいブルブル振動しているかを表すものです。hはプランク定数と呼ばれている定数です。
この光量子仮説を導入するとなぜ光の明るさを変えても電子が飛び出してこなかったかが説明できます。

光量子仮説によると、光はエネルギーhνを持った粒の集団です。光の明るさをあげると粒の数は大きくなりますが、結局電子にぶつかって与えれるエネルギーはhνだけです。
結果光の明るさ(光量子の数)を大きくしても光電効果によって飛び出す電子の数に変化はありません。
これが光量子仮説によって得られた結果です。
応用例
今までの話を聞くと光電効果なんて自分の生活に関係ないとあなたは思うかもしれませんが、実は光電効果はいろいろなところで関わっています。
日焼け
日焼け防止のクリームで「紫外線カット」を売り文句にしてる商品がほとんどですが、これは紫外線によって肌の表面にある電子が肌から奪われてしまい日焼けを起こすからです。

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紫外線は波長が短く振動数が大きいので光量子のエネルギーも大きいです。反対に赤外線は波長が長く振動数が小さいので光量子のエネルギーが小さいです。
光電効果の説明で見たように、赤外線をいくら肌に当てても光電効果を起こさないので赤外線をカットする必要はありません。
光電子増倍管
光を金属に当てると電子が飛び出すということは、電子が飛び出してきた時に、光が当たったと考えることができます。
これって光検出器とかに使えますよね。
実際光電子増倍管というものに使われていて、これによってちょっとの光を検出して、信号を増幅し光を検出する装置があります。
ニュートリノの検出で有名になったスーパーカミオカンデでもこの光電子増倍管が使われています。
ちなみにスーパーカミオカンデでは光電子増倍管を11,129本も使っているそうです。
これによってニュートリノがスーパーカミオカンデの中の水と反応した時に出てくる光を検出しています。
最後に
アインシュタインの光量子仮説によって、波と粒の性質を同時に併せ持つという考えが生まれました。これは二重性と呼ばれる考え方です。
実はこの2重性は量子力学の世界では当たり前のように出てきます。電子の2重性を観測した二重スリットの実験も面白いのでぜひ読んでみてください。
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