こんにちは、物理学科のしば(@akahire2014)です。
大学の熱力学の授業で熱力学第二法則を学んだり、アニメやテレビなどで熱力学第二法則という言葉を聞くことがあると思います。
でも熱力学は抽象的でイメージが湧きづらいのでなかなか理解できないですよね。
そんなあなたのために熱力学第二法則について画像を使って詳細に解説していきます。
これを読めば熱力学第二法則の何がすごいのか理解できるはず。
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熱力学第二法則とは?
なんで熱力学第二法則が考えらえたのか?
中学や高校の歴史の授業で「産業革命」ってあなたは聞いたことがあると思います。蒸気機関が発展して、いろんなことがラクにできるようになった時代ですね。
蒸気機関の原理
例えば、蒸気機関というのは以下の画像のような装置です。

複雑そうな機械に見えますが、要するに蒸気の力を使っていろんなことを機械でやろうというのが蒸気機関です。

これは熱力学第一法則を表した図なのですが、熱力学第一法則では
の関係が成り立っています。内部エネルギーは簡単に言うと中の気体の温度のことです。
この図で何で大事なポイントは熱を仕事に変換できるというところです。
これを応用して、仕事をさせるには次のことを考えればいいわけです。
こうすることで、

何かから熱を取ってきてそれを仕事に変換することができます。もちろん内部エネルギーが変化してもいいです。
実際にこれは現代でも使われていて、火力発電所はこの原理で動いています。石炭を燃やして得られた仕事で電気を作り出しています。
熱を自動的に無限に取り出して永久機関を作りたい
上の図を見て思いつくのが「ΔU=0になるようにすればめっちゃいいやん」ってことです。
ですがこれは無理です。昔の人も同じようなことを考えたのですが、いろいろ思考錯誤するうちに無理だとわかったのでこれが法則として考えられました。
そして熱力学第二法則という名前がつけられました。
熱力学第二法則の有名な3つの表現
熱力学第二法則には表現方法が幾つかありますが代表的なものを紹介します。
クラジウスの原理
低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す以外に、他に何の痕跡も残さないようにすることは出来ない。
めちゃくちゃわかりにくいですが、これがクラジウスの原理と呼ばれるものです。大学の熱力学の授業でこの原理が出てきたときには疑問しか浮かびませんでした。
クラジウスの原理は、逆に言い換えると理解するのが簡単になります。
冷たいものから熱いものに熱をうつすときには必ず仕事が必要である。

右側が何も仕事をせずにできると、例えば「海水の熱を吸収して燃料なしで動く船」なんかも作れます。
そんな船ができたら便利ですが、現実そんなに甘くないんやでっていうのがクラジウスの原理です。
ケルビンorトムソンの原理
トムソン(ケルビン)の原理というのがあります。
この原理を考えた人はトムソンという名前でしたが、学問上の功績を認められてKnightの称号を与えられてケルビン卿という名前に変わりました。そのためこの原理は二つの呼ばれ方をしています。
ある熱源から熱を取り出してそれを全て仕事に変えることはできない
これがトムソンの原理の表現です。

これも昔の人がこんなことができたらなあと考えた結果無理なことが経験的にわかって得られた法則です。
例えば熱が100%仕事に変換できれば火力発電所はかなりの高効率で電気を作り出すことができます。
現在火力発電所の熱効率は得られた熱に対して50%ほどの電気を作り出せるくらいが一般的なようです。
オストワルドの原理
第2種永久機関は実現しない
これがオストワルドの原理です。クラジウスの原理やトムソンの原理に比べるとわかりやすい表現です。
第2種永久機関というのは「一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に、他に何の痕跡も残さないような機関」の事です。
つまりオストワルドの原理が言っているのはこの画像と同じです。これは考えるまでもなくトムソンの原理と同じであることがわかります。

ちなみに第2種永久機関ですが、これは今になっても「実現した!」と言って特許庁に特許を申請する人が後を絶えなかったらしいので、現在では第2種永久機関の特許の申請はできなくなっているらしいです。
クラジウスの原理とトムソンの原理は同じである。
実はクラジウスの原理とトムソンの原理が言っていることは全く同じであることは証明されています。
説明は省略しますが、証明は教科書を見れば簡単にすることができます。高校の数学で習う対偶証明法を使うだけです。
まとめ
熱力学第二法則から得られる結論は
- 低い温度のものから何もせずに熱を取り続けることはできない
- 熱を全て仕事に変換することはできない
- 海水の熱を使って燃料なしで動く船は作れない
ということです。これが出来てしまえば、海水から熱をとって超楽して発電!とか出来たんですが、自然はそんなに甘くなかったということです。
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